目次
トルコでクーデター理由は? 現在の状況は?
1 今回のクーデターの経緯を簡単に
15日から16日にかけて、軍のエリート将校らが決起を呼びかけ、一部が参加。
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エルドアン大統領はバカンス中だったため、留守を狙われた。
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イスタンブール市内にて、警察官と銃撃戦に。警察官は政府側につく。
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世界屈指の実力を持つトルコ空軍の一部も、クーデター側に協力。国会議事堂などを爆撃。
戦車部隊がアタチュルク空港や市内へ。市民に発砲。
ボスポラス海峡にかかる橋がクーデター側に占拠され、戒厳令や外出禁止令が出される。
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クーデター側が政権掌握したとの声明を出す。
市民によるクーデター反対のデモ。
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エルドアン大統領、深夜4時過ぎに空港に到着。「掌握はされていない。クーデターは鎮圧される」との声明を出す。
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現在は、沈静化に向かっているが、まだ互いに主権を主張している段階(双方が勝利宣言)。
イスタンブールは若干落ち着いているが、首都アンカラはまだ混乱。
しかし、今回のクーデターはトルコ軍の一部に過ぎないため、数としては少なく、鎮圧される見通し。
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追記 7月17日
事態はとりあえず沈静化。
今回のクーデターは失敗に終わったとの声明を政府側が出しました。
政府は3000人以上の軍関係者や判事などの拘束に乗り出しています。
また、イスラム穏健派のトップ、ギュレン師が今回のクーデターの首謀者だとエルドアン大統領は主張しています。
※ギュレン師とは何者かについては以下に記述。
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7月18日
さらに警察官を含む9000人の公務員の解雇が決定。
少し行き過ぎたエルドアン政権に、また批判が集まりつつあります。
追記:11月現在完全に沈静化され、観光も可能な状況になっています。
2 クーデターが起きた歴史的背景は?
トルコ国内には、世俗派とイスラム派という二つの大きな勢力がありました。
世俗派とは、西欧から侵攻を受けていたオスマン=トルコ帝国から共和制を掲げるトルコ共和国(現、トルコ)に変わる際、ケマル大統領が掲げた「政教分離」政策(を支持する人)全般をさします。
つまり、イスラム思想ではなく、西欧式の文化を取り入れ、政治には宗教色を出さず、先進国の仲間になろうという政策です。
実際それでトルコはおおいに発展します。←今回のクーデターを起こした軍はこっち。
反対にイスラム派はイスラム文化を取り戻し、イスラム主義に基づいた政策を行おうとする派閥です。
古来よりのイスラム文化を守っていこうとする思想で、現エルドアン大統領政権はこちら側。
トルコでの政教分離はすさまじく、公の場でのスカーフ(イスラムの女性が顔を隠すこと)を禁止したり、公の場で公人がイスラムの歌を歌ったりするだけで捕まったりとかなり過激でした。
そのため、イスラム文化を認めさせたい人々も大勢います。
トルコではこの二つの勢力が半々でした。
3 どうしてクーデターが起きたの?
エルドアン政権は国民の選挙によって選ばれた民主的な政権です。
しかし、少数派のクルド人や世俗派の人々に対して、非常に強権的な圧制をしきました。
トルコの企業は半分が国営なのですが、政権がイスラムである以上、世俗派は生活においても制限を受けたりしていたんですね。
また、世俗派の将校を粛清したり、イスラム回帰を強引に進めようとしました。
またトルコ政権は軍の圧力がもともと強かったため、政局を安定させるために、軍の勢力を排除しようと動き、軍関係者を多数投獄したりしています。
その結果、ISISとの戦闘でも苦しい戦闘を強いられ、不満が高まっていた軍のエリート将校たちが、
再び世俗派の政権を作り直そうと、今回のクーデターを起こしたというわけです。
昔の日本でも2.26事件というものがありましたが、今回もそれと非常に似ています。
4 裏情報ではこんな話も・・・
トルコはEU加盟を希望しています。
でも、イスラム政策のトルコをEUは受け入れたくはありません。
そのため、裏世界で世俗派のクーデターにより、政権を変えさせようとした話も・・・。
真偽は定かではありません。
5 世界の反応は
オバマ大統領は声明で「エルドアン政権は民主的に選ばれた以上、クーデターを許してはならない」と言っています。
クーデターを許せば、エジプトのように、国内が混乱し、新たな過激派などが台頭してくる可能性もあります。
そのため、西欧諸国はエルドアン政権側についています。
(そもそもクーデターを認めると、自国でも反対派に口実を与えるので、まず否定するのは当たり前なのですが)。
6 エルドアン大統領ってどんな人?
新オスマン主義を掲げるトルコ人。
過去に市長在任中にイスラムの詩を朗読したことが国家治安法廷(現在は廃止)に反するとして、4年半の実刑判決。
その後、政権を取ると、軍の圧力で不安定だった政治を安定させます。
そのため、国外からは高い評価を得ていました。
ただ、これまでにジャーナリスト100人以上に加え、約250人の軍関係者を投獄したり、
「ツイッターを根絶やしにする」との発言や政府がウェブサイトの遮断や個人のインターネット閲覧記録収集をすることを認め、実際にユーチューブを遮断しています。
このような過激な政策が発端になったとも言われています。
7 突如名前が挙がったギュレン師とは何者か?
エルドアン大統領は、今回の首謀者がギュレン師だと述べています。
ギュレン師とは、穏健派のイスラム学者で、エルドアン大統領の政策に反対の姿勢を示していたトルコ人のイスラム学者です。
1960年代末には彼を指導者とした「ギュレン運動」というものが活発に行われました。
内容は、主に慈善運動や学校建設などを行い、イスラム教の教えと共に、科学や近代教育を取り入れ、政府が関与しない市民による教育施設を作ろうと活動するものです。
イスラム教では、それぞれ派閥によって、「女性は教育を受ける必要がない」などというものもあったり、国によって様々です。
そういった国の関与を失くして、イスラム世界に教育と人道支援を行おうという彼の活動は、大きな支持を集めています。
但し、やはり国の関与を否定するということは、政府関係者からは政教分離を進める危険な集団として、敵視されたり、世界中に作られた学校が「洗脳施設ではないか?」とその勢力の大きさを危惧する声もあります(他にテレビ局などのメディアも保有)。
トルコにおいては、「世俗主義(上記参照)とイスラム教の精神は反しない」と主張して、世俗派から多数の支持を集めています。
だからこそ、今回の首謀者ギュレン師ではないか?との推測が建てられたようです。
ギュレン師は現在、持病の治療のため、アメリカにわたっており(公式理由は病気ですが、実際は狙われる危険を回避するためかもしれません)、エルドアン大統領は引き渡しをアメリカに求めています。
しかし、ギュレン師本人は、「クーデターを批判する」との声明を出しており、自身の関与を否定しています。
また、アメリカ側もギュレン師が首謀者との証拠を示すようにトルコに要求しているのが現状です。
まとめ
空軍同士で、戦闘ヘリと戦闘機が互いに戦うという情勢にもなってしまった今回のクーデター。
クーデターを起こしても市民に被害が出ている以上、世論はエルドアン政権を支持する声が多いようです。
観光していた日本人は現在空港やホテルにて待機。(制圧された空港とは別の場所)
今のところ日本人の被害はないようです。